Twilight

白日の喧噪が薄らぎ万物がその形姿を背景に溶け込ませる日没時、 今日を振り返り、明日に思いを馳せる。
窓に明かりが灯り、会話が始まる。
明日も良い一日でありますように.......。
Stone cutter (鉱物研磨職人) Aquilax O

Aquilax #52 ラスティク ネックレス 46cm

      2016/12/07

Aquilax #52 - Rustic Necklace

溶かし、叩き、くっつけ、また叩く

私の金属仕事は、正規の手続きを踏んでこられた彫金家の方々の仕事とは、きっとかけ離れた手法なのかもしれません。

はっきり言ってしまえば原始的です。

 

石や革、木もそうですが、一度カットしたり磨き落とした部分は戻ってきません。作業を進める毎に、時間の経過と共に、間違いなく素材は体積を失っていく。

偉そうな言いようですが、後戻りの効かないそれなりに緊張を強いられる時間の中で成果品が生まれます。 特に希少で高価な素材となると、エイヤーの気合いでは仕事にはならない。

 

ところが私の場合、金属は違う。

金属との格闘といったら良いのか、かなりドロドロとした情念の世界での取り組みが方が私の選んだ表現手法だからです。イメージに近づくまでは何度溶かし直そうが、叩きまくろうが、そんなことにはお構いなし。設計図を書いた上での寸分狂いのない彫金仕事やワックスで原型を作成し、鋳造は専門業者といった彫金の王道とはかけ離れた取り組みです。

 

今回のペンダントトップ(とジャンル分けしてはいますが、要するにオブジェです)の場合、まず純銀の笹吹きとアンティークシルバーを溶かしてインゴット状態の塊を作り、ハンマーで叩いて全面にテクスチャーらしきものを作る。もう一度熱し、そこに銀線やらアンティークシルバーのビーズやらを手当たり次第配置してインゴットと一体化させて共付け。精密なロウ付けとはかけ離れた荒っぽい技です。

共付けをすれば金属は溶けるわけですから、最初叩き込んだハンマーのテクスチャーは大方溶けてしまうわけで、またまたトンカントンカン、ハンマーで叩く。

まあ、そんな感じで記憶の底に蠢いている「形にならない何か」を定着しようとしているわけです。

 

寒さ嫌いな金属

溶かして叩いてくっつけて、それだけでも何かは出来ます。

しかしそうは問屋が卸さない。使える何かにするにはどこかで彫金としての儀式を執り行う必要があるわけです。今回の場合、ロウ付けがその儀式でした。

 

すべての作業は誰に師事したわけでもスクールで学んだわけでもない、一からの独学。これは石も木も同じことです。したがって不合理もあれば失敗も多い。克服するには失敗を重ね、そこから何かを学ぶしか術はないわけです。が、私にはそれが楽しい。

分からないこと、できないことを誰かに聞いて済ましたことはただの一度も無かった、と云えます。趣味の銅版画だけは特別で、すごい先生に師事してますが、しばらく停止、年明けには再開です。

 

金属のロウ付けも同様の独学。たしかに彫金家の方々の手先を観察したことはありますが、それはあまりにも熟練した精緻な作業ですから、私に移植しようとは考えませんでした。しかしなにかの参考として記憶の中にとどまっている。

 

ロウ付けは金属で「使える何か」を作ろうとすれば避けて通れない道。私なりの解釈はただひとつ。「金属は寒さが嫌い」ということです。なにやら訳のわからんことを言う奴、と思われるでしょう。

つまり金属を溶かした時、必ず起きる現象というのがあって、それは温度の高い方、より熱い方へ溶けた金属は流れるという不変の原理です。これさえ押さえておけば金属と金属は確実かつ強固に融合する。金属は自らを溶かし身悶えながらもさらに熱いところを求める。

 

Art informel - 時代遅れ?

1940年代後半から50年代にかけて、アート世界を席巻した強力な流れがありました。アンフォルメルという表現様式です。語源はフランス語のArt informel。非定型芸術と和訳されました。

言葉の通りです。定まった形がない。いや、これは正確ではない。むしろ見たことない形、定型化されていない形を芸術表現の要素として舞台に押し上げた。

概して激しい情念、アクションによる抽象的表現。それは大戦という地獄の嵐をくぐり抜けた人間が見てきた、あるいは経験してきた破壊、殺戮、喪失による深い傷を癒す表現手法のひとつだったと考えています。

 

ここでアンフォルメルについて詳しくは述べません。膨大な枚数を必要とするからです。

言えることは人間が受ける心の傷は深浅の違いこそあれ、どの時代、誰にでもあてはまることではないかと思えることです。

心の底や闇の部分に存在する形のない何か。

 

アンフォルメル芸術、とりわけ絵画は私にとって重要な位置を占め、また意味を持っています。

ジャクソンポロック、ジャン・デュビュッフェ、難波田龍起、白髪一雄、元永定正など、時代を激しい勢いで駆け抜けた画家たち。中でもジャン・フォートリエやヴォルスのアクションの末の漂白され凝縮されたマチエールと腕や手の動きの痕は現在も鮮烈な刻印として私の裡に刻み込まれています。

 

近年、ジュエリー世界に吹き荒れているラスティックという流れも、現代という極度にシステム化された社会に対する疎外感がその根底に通奏しているように思えてなりません。私にとって金属は格好の粘土だと感じてます。

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概要

トップ:.999シルバー鋳鍛造、燻し仕上げ。 クラスプ:.999シルバー叩き締め、燻し仕上げ 強力ネオジムマグネット内蔵。 直径5.2mm 最高級山羊革ステッチ ソフトコード ブラック。 装着サイズ46cm ユニセックス 1点限り
  1. トップ:.999シルバー鋳鍛造、燻し仕上げ。
  2. クラスプ:.999シルバー叩き締め、燻し仕上げ 強力ネオジムマグネット内蔵。
  3. 直径5.2mm 最高級山羊革ステッチ ソフトコード ブラック。
  4. 装着サイズ46cm
  5. ユニセックス
  6. 1点限り

Aquilax #52 ラスティク ネックレス 46cm Workページへ - Sold out.

 

ここだけの話

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

さて、ここだけの話です。

明日撮影のできる天候でしたら、ほぼ5年ぶりにターコイズの一級ルースをリリースします。

世界でも珍しいエジプト・ターコイズのレッドウェブ。今夜はその最後の見直し磨きをします。

偶然の入手でした。詳しい年代は不明ですが古いものだろうというのが作業しての実感です。買い付け価格が予想外に手頃でしたので、現実的なリリース価格になります。ご期待ください。

 

 - Aquilax