Twilight

白日の喧噪が薄らぎ万物がその形姿を背景に溶け込ませる日没時、 今日を振り返り、明日に思いを馳せる。
窓に明かりが灯り、会話が始まる。
明日も良い一日でありますように.......。
Stone cutter (鉱物研磨職人) Aquilax O

悠遠を遊ぶ (1)

      2016/07/03

RomanBronze and Hill Tribe Silver Choker

Aquilax
アンティーク カレンシルバー
ローマン ブロンズビーズ
ブレスレット

日のテーマは異なる地域、時代を旅してきたビーズ。言い換えると時空を超越して現代にまで生き残ってきた異なる文化同士のコラボレーションについてです。
制作したチョーカー(二連にするとブレスとして着用できます)のセンター部分に使用した金属ビーズからご説明をしましょう。これはヨーロッパ文化の礎石を築きあげた古代ローマ帝国時代の青銅(Bronze)ビーズです。「Beads Trade / 300B.C. to the Present by P.fRANCIS,jR.」、「Beads and Bead Makers by L.D.Sciama & J.B.Eicher」などの資料によると年代的にはB.C.509年~B.C.27年までの共和政ローマ中期から末期にかけて作られたビーズだと思われます。つまり紀元前の遺物です。
そんな昔のビーズがどのようにして僕の手許にもたらされたか。ちょっと触れておきましょう。
このビーズとの出会いは約12年前、香港、台湾、タイ、インドネシアなど主にアジア各国にビーズを求めて出入国を繰り返していた頃の話になります。
当時、バンコクでの定宿は チャオプラヤ川沿いのシャングリラ・ホテル。有力な紹介者のお陰で訪れる度ごとにリバーサイドのエグゼクティブリバービュースイートが信じられない格安チャージで準備されてました。
荷を解いて風呂に入り、軽くビールを呑んでからホテルを出る、これが旅先での習慣です。
歩くこと10分あまり、バンコクではまずNEW ROADで長年骨董商を営んできたMr.Pusit Eakapongpaisalを訊ねます。骨董商というよりビルマ王朝時代に関する研究者でもある学者肌の温厚な彼とは友達のように付き合い取引を重ね、逢う度ごとに古い時代の貴重なビーズを紹介してくれました。この時入手できたのはローマン・ブロンズ・ビーズ6点、ササン朝ペルシャのシルバービーズ、シルバーコインなどすべてミュージアムグレードの稀少なコレクションばかり、このローマン・ブロンズはトルコのイスタンブールで出会ったということでした。
2000年以上の時を経て、古代ローマからアジアとヨーロッパが交差するバルカン半島へ渡り、さらにタイを経て日本へ、地球の約半周を旅してきたビーズというわけです。

アクセサリーに組む前に、極端に腐食が進行していた通し穴の周囲を慎重に成形し、全体を柔らかなコットンで念入りにリポリッシュしてあります。ほぼ同じ仕様のビーズを長年愛用していますが、腐食した色が衣服を汚すこともなく、長い年月が生み出した美しい金属肌は寡黙な存在感そのものだと感じています。

RomanBronze and Hill Tribe Silver ChokerRomanBronze and Hill Tribe Silver ChokerRomanBronze and Hill Tribe Silver Choker次にローマン・ブロンズ・ビーズ以外のパーツについてです。
タイ北部、ミャンマー(ビルマ)との国境地帯、標高600~700mの高原地帯に住み、独自の伝統文化を守り継承してきた少数山岳民族カレン族、次は彼らについて話を進めたいと思います。
山岳民族の歴史は古く、その起源は1,500年以上昔にまで遡ります。英語でHill Tribeと呼ばれている彼ら民族は18世紀にビルマ国内の混乱により度重なる迫害を受け、国境を越え現在のタイ北部山岳地帯に逃れてきました。

Hill Tribeの集落が点在するタイ、ミャンマー(ビルマ)、ラオスが交わる国境の山岳地帯、思い浮かぶのは「黄金の三角地帯」、世界に冠たる麻薬の一大生産地です。大多数のHill Tribeはこの地域で麻薬の原料となるケシの栽培に関与し、また毒されてもきました。そのような歴史的背景の中で、カレン族は唯一アヘンに手を染めることのなかった民族だと言われています。


Hill Tribeにはカレン族以外にモン族、ヤオ族、アカ族、リス族など現在確認できるのは10数族、最大規模を誇るカレン族は2,000以上の集落、総人口35万人とも40万人ともいわれていますが正確な数字は把握されていません。(10年ほど前までは戸籍を認められませんでしたが、近年になりようやく国家が国民として迎えるようになっています)。カレン族以外の山岳民族になると集落数も少なくその数は10分の一以下、最も少ないトンスー族に至っては確認されている集落数は4、人口300人ほどです(タイ社会福祉局調査資料より)。


このカレン族ですが、一般には「首長族」、日本では象を調教することができる民族として知られているようです。実話をもとに映画化された「星になった少年」(原作:『ちび象ランディと星になった少年』坂本小百合著)で主人公の坂本哲夢がタイの訓練センターで指導を受けた象の調教師ポーがカレン族です。
カレン族は自然界のすべてに精霊が宿ると信じ、森羅万象を畏敬の念で捉えてきた誇り高い民族です。今ではその多くが山を下り、チェンマイ、メーホンソン、ターク周辺に居を移し、仏教徒あるいはキリスト教徒として生きていますが、一部の村落は未だ奥地で暮らしています。

 

頼れるべき国家を持たない彼らは連綿と銀を蓄え、高度な加工技術を培い、驚異的とも言える銀製品を生み出すシルバースミスとして世界的に知られてきました。それが有名なカレンシルバーです。純度95%以上、ほぼ純銀に等しい素材から作られてきたカレンシルバーには彼ら民族が森羅万象に宿ると信じてきた精霊を図象化した刻印が打刻されています。ビーズと信仰心、アニミズム(animism=アニメーションの語源)については改めてタイトルを立て記述しようと思います。


先ほどご紹介したローマン・ブラスビーズとほぼ時を同じくして、ぼくはタイ北部の歴史都市チェンマイから車で2時間ほどの高原地帯に住むカレン族集落を何度となく訪れ、多くのビーズを制作していただきました。

次の写真は当時の村やシルバースミスたちの様子です。
カレン族カレン族カレン族カレン族カレン族カレン族カレン族は現在も神秘と謎に満ちたビーズを制作し続けていますが、今日リリースのチョーカーに用いたカレンシルバーは18世紀頃、魔除け、吉祥、幸運の意味を込めた装身具として作られたものがベースとなっています。数百年を経て劣化した糸は実用には向きません。すべてパーツに分解しての作業でした。
小さなシリンダービーズの直径は約1.4mm、二連ずつを捻り、さらに四連にして再び捩るという伝統的デザインを忠実に再現しリメイクしたものです。

RomanBronze and Hill Tribe Silver ChokerRomanBronze and Hill Tribe Silver ChokerRomanBronze and Hill Tribe Silver ChokerRomanBronze and Hill Tribe Silver Choker古代ローマからオリエントを経て日本にたどり着いたブロンズビーズ。迫害を逃れアジアの山岳地帯で生き延びてきた民族によるシルバービーズ。歴史を超え、時代を超えた異なった文化をひとつの世界として昇華させたい、そんな思いから敢えて細かな作業に挑んでみました。
完成してみると一つ一つのビーズを糸に通す単調な作業が実に豊饒で確かな時間であったことを記しておきたいと思います。

商品No.:TW130903
商品名:RomanBronze and Hill Tribe Silver Choker
サイズ:全長 410mm、最大直径約18mm
designed (beading) : Akira Obata
重さ:32.24グラム
RomanBronze and Hill Tribe Silver Chokerは完売しました。
ありがとうございました。

 - Aquilax