Twilight

白日の喧噪が薄らぎ万物がその形姿を背景に溶け込ませる日没時、 今日を振り返り、明日に思いを馳せる。
窓に明かりが灯り、会話が始まる。
明日も良い一日でありますように.......。
Stone cutter (鉱物研磨職人) Aquilax O

秘色と白緑(ダマリ&ロイストン)

      2016/07/10

ダメイル ターコイズ39.50ct. 勾玉 秘色 ダメイル・ターコイズ39.50ct.(W18mm / H27.60mm / D14.20mm) 通し穴経3.6mm

州はどこからでも山々の姿を目にすることができる。
新緑の深い青緑、厳冬の厳しく尖った銀白色の稜線、雨に降り込まれた彼方に水墨画のように滲む蝋色の山並み。仕事に追われているとつい見逃してしまう四季折々の微妙な色彩の変化。最近は急を要する以外、極力瑣事から遠退き、自らの心拍数を数えるように時々刻々、時間の流れを紡ぐように暮らしている。幸い石を磨く時の流れは滅法緩やかだ。その緩慢さが内面や外界に対する観察力を鍛えてくれるような気がしてならない。どこかに置いてきてしまった自然と一体化した時の流れが日常に戻って来つつある。これも癌宣告の賜物に違いない。
日本は湿度の高い国だから、乾燥した大陸気候地帯と異なり自然界での緑と青の色域が截然としない。その曖昧さが日本独自の微かに灰色を溶かし込んだ美意識を育み、含羞文化を生み出した。


ここ数ヶ月、山々は噎せ返るような夏の緑に覆われているにも拘わらず、遠くから俯瞰すると揚々たる蒼白色に見える。万葉人は緑とも青とも区別しがたい中間色の山々を愛で「青垣山」「青管山」「青葉山」といった呼称で表現した。
万葉人の穏やかな感性とは比ぶべくもないが、現代人が緑に点灯する信号の光を「青信号」と呼んだり、「グリーン車」「みどりの窓口」「みどりのおばさん」など、ホッとする空間や安心感に繋がるイメージなど、公約数的に眺めると日本人は事象に応じて「緑」を「青」と置き換え認識してきたようだ。そのような風土性は農耕文化と無縁ではないだろう。緑は草木や稲田の生命の色であり、豊饒への証でもあるからだ。

たしかに自然界は緑(色)にあふれ、日本人は季節の移り変わりと一体となって暮らし、自然界の微かな変化そのものを美として捉え育んできた。
春先、土や残雪を押し上げて命の再生を謳歌する若芽色に始まり、少し成長すると若苗色、萌葱色、やがて新緑色、濃緑色、老松色、苔色へと季節を追うごとに色名が変わる。緑色のバリエーションは日本人の感性そして生活を確実に豊かにしてきた。


しかし緑色を生活に取り込むというのは困難なことだったようだ。衣服への染色を例にとっても、緑色を染色で表すのはむずかしい。青色(露草)や赤色(丹)などと異なり、植物の緑は繊維に限らず紙や木材へは容易に定着しない。知られている染色方法は、まず青色に染めてから苅安など黄色を染め重ねて緑色を表現した。鉱物を砕いた顔料に緑青はあったが、染料には恵まれなかったのだ。
それでもなお、いや容易ならざるからこそ、日本人は緑色を愛し生命力と豊かさの表徴として神聖視してきた。嬰児(みどりご)は生命力を秘めた幼子のことだが、その起源は古く、大宝律令(701)の定めとして「三歳までの男女児の戸籍に『緑児、緑女』と記す」とある。思うに定着するのではなく移ろう儚さに美を感じようとしたに違いない。参考までに乳児を赤子・赤児と言うが、これは生命の源である血液の色にちなんでのことである。

目を転じて食生活を考えてみても日本人が「みどり」を味わう食感の豊かさ深さを実感することができる。
朝起きてまず口にするのが一服の日本茶。これ無くして私の一日は始まり得ない。この慣習はたとえ国外の宿泊先であっても変わることはない。
味噌汁の青々としたほうれん草やサヤエンドウ、瑞々しい浅漬けのキュウリ。炊きたての白飯。どの家庭でも見られる朝餉の景色だろう。

蝉時雨の昼下がり、団扇片手に竹串で食する和菓子の世界。私たちは味覚と視覚で涼しさを味わってきた。右写真は祖父が好きだった銀座空也の翡翠。抹茶を使った葛に錦玉羹を載せ冷やして固めた涼菓。夏目漱石『我が輩は猫である』には「えゝ其缺けた所に空也餅がくっ付いて居ましてね」との件がある。他にも林芙美子、舟橋聖一など顧客リストには昭和の文豪も多数名を連ねているという。空也ファンは今や海外にまで広がっているそうだ。

冷水からすくい上げたばかりの豆腐に新芽のサンショウ、刺身には抗菌作用と臭みを消す笹の葉やワサビ。信州、とりわけ松本に接する安曇野は日本有数のワサビの生産地。鮫皮でおろした生ワサビが、香りと一緒に食卓に添えられる。ツマとしてオゴノリやトサカノリを添え、大根の白は波しぶき。潮風さえも食卓に再現しようと知恵を絞ってきた。
話を急ごう。


今日リリースのダメイルとロイストン、共に「みどり」をテーマとしてカット研磨したものです。この二点に限らず、ここ数ヶ月、ターコイズの主流であるブルー系よりグリーン系の仕事が多い。2+1のトップページを改めてスクロールするとその傾向はあきらかだ。
ターコイズブルーよりターコイズグリーンに焦点が絞られている。それは自身の興味の問題かもしれないが、あえて言ってしまうと日本人にとってのターコイズとはなんだろうか、そんな疑問に端を発している。それは洋装和装を問わず、この国の文化の中でターコイズをどのように位置づけたらよいかという試行錯誤の現れと捉えて頂いても良いのではないかと思う。

一点目のダマリは私の中にある「勾玉」を形にしたものです。国立博物館に所蔵されている強く湾曲した勾玉とは形状が異なりますが、原石の組成的制約からこの形状で落ち着きました。この形、実はNHK教育テレビおかさんといっしょで流れていた「おばけのハオハオ」、あの愛らしくも寂しげな姿(形)が源流です。

ハオハオは漢字で書くと「好好」、辛いことがあった時など、無意識のうちに
あるひ やってきたよ
おばけのハオハオ
「ハオ!」とてをあげ
「あそぼうよ」って
ぼくのポケットに はいってきたよ
・・・

(作詞:おーなり由子 作曲:知久寿焼)
と口ずさんだりしています。


facebookでKMさんからご質問をただいたように「玉」と「霊(たま)」、さらに形や色に込められた霊的な意味については次回リリース予定の「奴奈川姫(ヌナガワヒメ)伝説 糸魚川産ひすい 勾玉」で詳しく触れようと思います。
ではタイトルにもなっている「秘色(ひそく)」についてです。
この色に近いのが広く知られている「青磁色」。淡く渋い青緑ですが、青磁色は「秘色」より濃く、さらに濃いのが「岩緑青(いわろくしょう)」あるいは「緑青」です。
反対に秘色より薄いのは「白緑(びゃくろく)」。白緑は緑青をさらに細かく砕き、微細な粉末にすると淡く白っぽい緑色「白緑」になります。奈良時代、寺院の仏像、仏画に顔料として重用された「みどり」です。
「青磁色」と「白緑」の中間に位置する「秘色」は中国浙江省で焼かれた青磁色を源とする青磁器の最高峰とされ、磁器の原料となるカオリンに含まれる微量の鉄分と灰釉とが焼成窯の還元炎(酸素の供給を減らし、いわば蒸し焼き状態を作り出す)によって焼成反応を起こし生み出されたものです。
19世紀フランスでこの「秘色青磁」を再現しようと亜ヒ酸酢酸銅を用いてパリス・グリーンの磁器が焼かれましたが、それらは「秘色」というより濃度の高い「花緑青」、しかも亜ヒ酸酢酸銅は有毒物質であるため生産は中止されました。
じつはターコイズの世界ではブルー系よりグリーン系のほうが色味ははるかに豊かです。青系のターコイズは需要が高く、様々な人口処理が施されていますが、グリーン系は需要が限られていることもあり、純粋な天然原石が多い。そんな事情もあって、最近はグリーン系ターコイズに対する拘りが増しているというわけです。

ダマリとロイストン、まるで同一鉱山といっても相違ないほど近しい緑ですが、仔細に見れば見ほど、出生地の違いが見えてきます。ダマリの青緑は硬質な「秘色」、ロイストンはパステル調の暖かみを帯びた「白緑びゃくろく」というように判断をしました。

1.ダマリ・ターコイズ39.50ct. 勾玉 秘色
商品No.:TQ130908A
商品名:ナチュラル ダマリ・ターコイズ39.50ct. 勾玉 秘色
サイズ:W 18mm / H 27.60mm / D 14.20mm(ソリッド)
Lapidarist (Stone Cutter) : Akira Obata
カラット数;39.50カラット
ナチュラル ダマリ・ターコイズ39.50ct. 勾玉 秘色は完売しました。
ありがとうございました。



2.ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑

ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑
商品No.:TQ130908B
商品名:ナチュラル ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白緑
サイズ:W 17mm / H 21.90mm / D 9.30mm(ソリッド)
Lapidarist (Stone Cutter) : Akira Obata
カラット数;25.70カラット
ナチュラル ロイストン・ターコイズ25.70ct. 白は完売しました。
ありがとうございました。

 - 勾玉