Twilight

白日の喧噪が薄らぎ万物がその形姿を背景に溶け込ませる日没時、 今日を振り返り、明日に思いを馳せる。
窓に明かりが灯り、会話が始まる。
明日も良い一日でありますように.......。
Stone cutter (鉱物研磨職人) Aquilax O

Simpang South Sumatra "MidNight Blue Amber"

      2016/05/15

MidNight Blue Amber こんにちは、小畑です。 今日はインドネシア、スマトラ島南部の都市「シンパン」近郊で採掘された琥珀について書きます。 採掘された地点はシンパンの南、コメリン川の峡谷地帯です。 参考までに例によってGoogle Mapを添付します。 Simpang South Sumatra Simpang South Sumatra 画像をクリックすると拡大画像が別ウインドウで開きます。 ここの琥珀は磨き込む程に赤が鮮明になることから、インドネシアを代表するレッドアンバーとして主にヨーロッパの収集家に人気がありました。20年程前まで盛んに採掘されていましたが、パーム油のプランテーション、木材伐採、天然ゴムなどの産業が発達、高品質なアンバーにもかかわらず、市場の狭隘さ、経済効率の低さから採掘は途絶えています。 シンバンの最近の様子を伝える写真がImageShackにありました。想像以上に近代的な都市の様子が伺えます。 Simpang South Sumatra Photo by ImageShack. しかし町を出ると一帯は高原やジャングル地帯。 シンバンの琥珀は密林の中を蛇行する河川に面した湿潤な地中に鉱脈があるとされています。 Simpang photo by Setijo Pudjhirahardjo.on flickr. Simpang photo by Setijo Pudjhirahardjo.on flickr. 採掘当時の現地の様子を知りたいと思い、手を尽くしてみましたがそれは入手できませんでした。 産地についての概略はひとまずここまでです。 それでは今日の南スマトラシンバンのアンバーについて話を進めます。 日本語に「異形」という言葉があります。 画家の若冲、評論家の小林秀雄、フランス文学者の澁澤龍彦、能の大成者世阿弥。思いつくままにイメージしてみました。彼らに共通するのは容易に俗人を寄せ付けることの無い卓越した独自の美意識にあります。しかし彼らの美意識は俗を拒絶しているわけではありません。透徹した美意識の世界に容易に踏み込むことが困難だということです。 異形を広辞苑で調べると(普通とはちがった形。あやしい姿。いけい)とあります。 私が強く情景を抱く世界がこの二文字に込められているような気がします。 琥珀にはあやしさが秘められている。これが私の琥珀に対する思いです。 遠く白亜紀(1億4500万年前から6650万年前)に端を発し次の新生代第三紀のおよそ2000万年前、この長い時の流れの中で琥珀は成熟しました。そして現在も、これからも自然界にある琥珀は生き続けています。それぞれの原石の中には時として一億年を超える時間を蔵しているものも珍しいことではありません。 この地球年齢によって生成されたタイムカプセル。地殻活動による傷跡、あるいは様々な生命体を化石として閉じ込めたタイムカプセル。それは熟練した職人の手にかかることによって美しくもあやしい光を放つ。人智を超えた光の世界が現出する。それが琥珀だと言うことができるのではないかと私は思います。 ダイヤやルビー、エメラルドなど結晶系の鉱物は膨大な圧力と熱を加えることによって生成が可能です。それら人工の宝石は天然に比べて瑕疵も無く美しい。いや美しすぎて美意識というやくざな意識さえ介入する余地がない。もちろん琥珀の人工生成は成されません。太古の樹木、滴る樹液、自然条件、火山などの地殻活動、そして膨大な時の流れが必要だからです。 原石は表層に近づく程、時代は新しくなります。琥珀の研磨とは取りも直さず原石が宿している時間を遡るということでもあります。 原石の内部に息づく美しい光を求めて研磨を繰り返す。それは内部の時間を取り出すということに他なりません。 そのような概念を煮詰めることによって、ひとつの成果品が誕生します。それが私の琥珀に対する拘わりの定義です。 立体物を創るとき、一般的には塑像(modeling)と彫刻(carving)が考えられます。 塑像とは芯になる骨組みに粘土などの可塑性のある材料を盛ったり(貼付けたり)、ヘラで削ぎ落としたり、掌やげんこつで叩いたりしながらイメージを形造って行きます。 一方、彫刻は大理石などの塊を削ったり穿ったり叩き落としたりしながら、塊の中からイメージを取り出して行きます。 しかし琥珀の場合、このどちらも有効とはなりません。 内部にどのような時間が眠っているのか,樹液がどのようにうねり、そこに何が紛れ込んでいるのか、それらを予測することなどほとんど不可能だからです。塊の中に完成形をイメージし、そのイメージに向かうということができない。時として原石の味、匂いで判断することさえ日常の範囲です。つまり身体感覚というか皮膚感覚で作業を進める。そのような原初的な感覚を信じて修正を加えて行く。それが私に取っての琥珀研磨であり、「部分は全体の総和にあらず」というのが琥珀の正体です。 延々と自説を展開していてはきりがありませんので、今日の結論を申し上げます。 今日ご紹介の「シンパン」こそ、まさに異形、「妖しさ」の塊なのです。 誤解を避けるために最後に一言。 成果品が異形だということではありません。そこまでの美意識が私にある、とはやはり恥ずかしい、ですよね。 ここはあくまでも、原石の中に異形と言える何ものかが虎視眈々とこちら側を睨んでいた。そういうことにしておきます。 今回、写真だけでなくムービーを作成しました。 高解像度のムービーは YouTube にアップしてあります。 シンパンのブルー、その「妖しさ」をぜひ見極めてください。 (前回のブログ記事で予告致しましたリリース予定より大幅に遅れてしまいましたことをお詫び致します。) -------------------------------------- Ultra Super Rare. Top grade. Powerful Midnight Blue Amber. Simpang South Sumatra Indonesia. 125.95ct. 35.10 mm(幅) x 52.70 mm(長さ) x 26.60 mm(厚み) 完売しました。ありがとうございました。 -------------------------------------- Simpang South Sumatra MidNight Blue Amber Simpang South Sumatra MidNight Blue Amber Simpang South Sumatra MidNight Blue Amber Simpang South Sumatra MidNight Blue Amber Simpang South Sumatra MidNight Blue Amber --------------------------------------------------------------------------

 - スマトラ島の琥珀