Twilight

白日の喧噪が薄らぎ万物がその形姿を背景に溶け込ませる日没時、 今日を振り返り、明日に思いを馳せる。
窓に明かりが灯り、会話が始まる。
明日も良い一日でありますように.......。
Stone cutter (鉱物研磨職人) Aquilax O

ハルマヘラ ブルー&グリーンシーアンバー 424ct.

      2016/10/16

暖かかったり寒かったり、冬の安定した気候が崩れ始めるこの時期特有の気候変動です。
三寒四温、あるいはまた東風解凍と言えば春間近、ほっと一息といったイメージです。
地面からは次々と植物が芽吹き、桜の蕾も膨らみはじめ、自然界は濃密な活力を発散しはじめています。
しかし人間はといえば、何となく体が重く爽快な寝起きにはなかなか巡り会えません。
さらなる追い打ち、花粉症です!!

 


今年、我が家の花粉症第一号は妻。妻以外の家族3人にはその兆候すら見られず、今年はどうやら軽症で済まされそうだ、などとあなどっていたらとんでもない、ぼくはここ数日で一気に重症領域に突入。空一面土埃に覆われた春の嵐が落ち着き、うららかに広がる春霞の景色さえ、窓の彼方が恨めしく、ただただ花粉の襲来に相違あるまいと怯え、空気清浄機は終日運転といった有様。
信州ではリンゴの花が散るまでの約3ヶ月、鼻は痛み、喉はガラガラ、腫れた目での毎日になる覚悟です。
皆さんの中にも花粉症で苦しんでおられる方が少なくないと思います。ここは同病相憐ということでしょうか。

 

さて今日のリリースは、私の仕事にとって大切な意味を持った「亜細亜の琥珀」です。
何故に大切な意味を持った「亜細亜の琥珀」なのか。
それは第一に、この原石がインドネシア東部、モルッカ諸島Halmahera(ハルマヘラ)島で発見されたということです。

 

インドネシアのいくつかの島では様々なタイプの琥珀=アンバーが発見されてきました。しかしモルッカ諸島での琥珀の発見例は極めて少ない。明けても暮れても「琥珀」「琥珀」..........。呪文のように唱え探し続けてきた挙げ句の果て、偶然手に入れることが叶ったぼくにとってこれは記念碑的な原石であった。ということです。
平たく言ってしまえば、実にじつに個人的な価値観に起因してのことです。
そんな手前勝手な話になりますので、ご興味の無い方にとっては甚だご迷惑な話になります。ですので今日はご興味のある方に限って、お付き合い頂ければ、それだけでも十分だと思います。

 

ハルマヘラ・アンバーについては
昨年の9月14日「Halmahera Multi Color Amber」で触れました。ブログ記事にある2個の原石、今回は前回残した大きく平たい原石が素材となりました。下の写真がその原石です。

この原石はその後、写真の裏面にあたる部分をパートカット、全体に強い緑、青の蛍光発光を確認して保管棚に戻しました。
これまで世界各国の様々なタイプの琥珀に挑戦してきましたが、この原石の場合それらとは全く様子が異なっています。
周囲のナチュラル(岩石)が異常に硬く、濃色にも拘わらず高い透明度を誇り、内部には無数の亀裂、得体の知れない内包物、琥珀質は幾重にも層をなし、方向性さえ定かでは無い。言うなれば支離滅裂といった要素の塊。琥珀としてのグレードが果たして高いのか低いのか、一般的な判断基準では計ることのできない規格外としか言いようのない怪物いうことになります。
最初内包物は炭素質かと思いましたが、どうやら炭素質や異なった鉱物ではなく樹皮や維管束などの植物質が化石化したものである可能性が高い、ということまで判明。これは加工難易度が非常に高い、一筋縄では結果が出せない原石だったということです。

 

さらに数十グラム程度の個体であれば再買い付けは可能ですが、ここまでのサイズ(800グラム超)を再度入手することはほぼ不可能........と思われます。
などの理由から、簡単には手を下せないと判断し、保管棚に戻したわけです。
この原石と対峙するには、なによりも気力の充実が求められる、その時期を待つことにしました。
意を決し、仕上げに向け再チャレンジしたのが今月半ば。この琥珀の特異性から、作業の一部をUSTREAMを通じてライブ放映。

 

前回のハルマヘラの場合、炭素質がギッシリと詰まり、カットしてもカットしても冷却水は真っ黒くドロドロの磨き滓でした。しかし同じハルマヘラでありながら、今回は黒い磨き滓はほとんど無く、特に中工程以降になると白い琥珀質だけ。指先が炭素質で何日も黒く染まる、という経験も皆無でした。
何度かの試行錯誤を経て完成したのが以下の写真です。


上2枚は半透明のアクリル板をバックに透過光で撮影。
この透明度はボルネオあるいはジャワなどで産出されたアンバーとはあきらかに異なっています。
むしろドミニカとメキシコ産の特徴を併せ持った、といった印象です。発光のタイプは最上質のブカラに通じるものがあります。しかし縦横に走る内部の亀裂、これはカリマンタンなどに顕著な特性です。

800グラム4000カラットを超える魚のような形の原石、得られたのは424カラット、約十分の一。これはアンバーとしてごく普通の歩留まり率です。
次の写真は不透明な白っぽい台の上での撮影です。
次はブラックバック。
そしてこの石のディティールと内部にレンズを向けてみました。

この原石、以前にも書いたことですが採掘では無く河口域で「採取」されたもの、と伝え聞いています。
日本でも利根川河口域の九十九里浜で稀に琥珀が採取されたようです(時間が許せば調査したと考えています)。新潟の翡翠海岸もまた似たケースでしょう。
そのように考えるとハルマヘラのケースも上流域にその源泉があることは必定でしょう。たとえ小さくとも内包物の無いピュアなハルマヘラ原石が仮に入手できたとしたら、それは想像を絶する美しさではないかと思います。縁があればいつかきっと..........。

商品No.:NA120328
商品名:ハルマヘラ ブルー&グリーンアンバー 424ct.
サイズ:幅 68.10mm、長さ 88.90mm、厚み26.10mm
Lapidarist (Stone Cutter) : Akira Obata
カラット数;424.00カラット
完売しました。
ありがとうございました。

 

 

 - 南アジアの琥珀